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ホルマリン固定がん組織をがんワクチンに使用する方法とその応用法に関する内容は、国際特許申請中です。
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目次:
(1) 誘導されるCTLのがん細胞特異的な細胞傷害作用
(2) ホルマリン固定がん組織中のがん抗原の有用性
(3) 動物実験、そして 肝がん 第I相/第II相前期 臨床試験
(4) 肝がん 第U相後期 臨床試験
(Evidence-Based Medicine対応のランダマイズドスタディ)
(5) 脳腫瘍(多型膠芽腫、グレードIV)への効果
(6) 自家がんワクチン療法実地のタイミング(放射線・化学療法との併用可能性)
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(1) 誘導されるCTLのがん細胞特異的な細胞傷害作用
ホルマリン固定がん組織から作製した自家がんワクチンで誘導される免疫細胞は、主にCTL(Cytotoxic T Lymphocyte)です。CTLは正常細胞とがん細胞が隣接していても、がん細胞だけを識別して殺すという非常にシャープな選択性を示します。以下の図を順次ご覧下さい。
上の図では、生きているがん細胞の代わりに、未染色病理切片をターゲットにして、末梢血リンパ球分画からヒト自家CTLを誘導培養しようという方法を示しています。その結果、以下のようにCTLが誘導可能です。
上図で増えてきたリンパ球CTL(fix)とCTL(live)が、本当に患者本人の腎がん細胞を特異的に殺傷するか否かをテストしたのが、以下の図です。
ここでPt.46CとPt.46Nは同一の腎臓から分離された腎がん細胞と正常腎細胞です。GT3TKB、TUHR3TKB、TUHR4TKBは同じMHC-class I分子(HLA A2402由来)を持つ他人のがん細胞ですが、これらをCTL(fix)とCTL(live)は殺しません。Hpt.10は、おそらくPt.46Cと一部共通のがん抗原があるためでしょう、中途半端な殺し方をしています。
同じMHC-class I分子を持たない他人のOS-RC-2は、腎がん細胞としては同じはずですが、全く殺しません。
誘導されたCTL(fix)が、MHC-class I分子拘束性であることは、モノクローナル抗体を用いた活性阻害法で調べてあります。そのデータは、上図の出典論文中にあります。
また、誘導されたCTL(fix)がどれほどシャープながん細胞選別性を示すかをテストしたのが下図です。ここでは未染色腎がん切片上の腎がん組織部位と正常腎組織部位を、針で切り分け、それぞれの組織切片上で自家CTL(fix)を培養しています。がん組織に反応したCTLが特異的に活性化し増殖しています。
(2) ホルマリン固定組織中のがん抗原の有用性
がん細胞中の真のがん抗原分子(がん抗原ペプチド)はホルマリン漬けにした後でも壊れません。そのため、生きているがん細胞や生のがん組織をがん抗原ソースにする場合に比べて取り扱いが極めて簡単です。
本当にホルマリンでがん抗原ペプチドが壊れないことをテストしてみました。下図では、有名ながん抗原タンパクCEAをビーズにくっつけ、血球中の貪食細胞に食べさせ、細胞内にビーズが入ったことを確認してから、わざとホルマリン処理して殺し、その死んだ細胞をターゲットにして、同一人の末梢血リンパ球分画からCTLを誘導培養した方法を示しています。
そうすると、CEA-ビーズを食べさせた死細胞上で、リンパ球が良く増殖してきます(下図の赤線です)。その他の黒実線や点線は、対照です。
このようにして増えたリンパ球(CEA-CTL)は、同じMHC-class I分子(HLA-A2402由来)を持つがん細胞のうち、CEAを作っているがん細胞MKN45だけを殺します(下図のa図で赤線が100%以下にまで落ち込んでいます)。縦軸は生き残っているがん細胞(MKN45は一夜で2倍に増えてしまうほど増殖能力が強烈な胃癌細胞です)、横軸はEffector/Target ratioです。
しかも、このCEA-CTLは、CEAタンパク由来の単一のがん抗原ペプチドCEA652(9)を認識するだけではなく、がん抗原としての活性はCEA652(9)ほど強くはないけれども確かにがん抗原活性を示す多数のCEAタンパク由来のペプチド群も認識してがん細胞を殺します(下図)。
つまり、ホルマリン固定されたCEAタンパクからも実は多数のがん抗原ペプチドが壊れないで発生していること、それらを認識する多種類のCTLクローンが、この誘導されたCEA-CTLには含まれていることを示しています。
言いかえれば、もともとのCEAタンパク由来の多数のがん抗原ペプチドはホルマリン固定処理されても壊れないで抗原として機能したため、多種類のCTLクローンが誘導されたことがわかります。
がん抗原CEAタンパク一種類からでさえ、これほど多種類のがん抗原ペプチドが発生するなら、もしその他にもがん抗原タンパクががん細胞に含まれていれば(これはごく普通に起こることです)、それらから発生するがん抗原ペプチドは膨大な種類になると思われます。
わずかな種類のがん抗原ペプチドを合成して全体のがん抗原を代替させようとしても、とても無理なのがご理解いただけると思います。
この点にこそ、がん患者様自身のホルマリン固定がん組織そのものを丸ごとそのままがんワクチンのがん抗原ソースとしてしまうため、その患者様本人特有のがん抗原を極力もらすことなく有効利用できる「自家がんワクチン」の優位性があります。
(3) 動物実験、そして 肝がん 第I相/第U相前期 臨床試験
肝がんは手術で治したはずでも、術後再発率が非常に高いがんです。しかも術後剤発を防止できる効果的な方法は知られていません。上述のような基礎研究を経て、マウス肝がん細胞株Hepa 1-6を用いて、「ホルマリン固定Hepa 1-6肝がん細胞ワクチン」を作成し、動物実験を行ってみました。
マウスにこのワクチンを2回皮内接種しておき、最終接種7日後に生きているHepa 1-6細胞を肝臓内に注射、肝がんを形成させました。その結果、 対照群(ワクチンの代わりに生理食塩水を注射)では15匹中15匹で肝がんが出来た(平均307mm^3)の対し、ワクチン群では、15匹中2匹しか肝がんが出来ず、しかも出来た肝がんのサイズは、わずか平均2mm^3でした。しかも、このワクチンを接種したマウスには、調べた範囲では全く毒性らしきものは見つかりませんでした。
さらに、マウスにこのワクチンを2回皮内接種しておき、最終接種7日後に生きているHepa 1-6細胞を皮下に注射、がん組織の増殖速度を皮膚の上から計測していくと、明瞭に増殖が抑制されました(Jpn. J. Cancer Res. 93: 363-8, 2002.の中のFig. 1。データをご覧になりたい方は下段の当社までご連絡下さい)。
そこで行ったのが、肝がん 第I相/第U相前期 臨床試験です。その結果、同じ大学病院の外科の歴史対照群の症例に比べて、明らかに再発が抑制されておりました。問題となる副作用(CTCグレード3以上)も全くありませんでした。
(結果は → ここをクリックして、そのページトップの図1をご覧下さい)
(4) 肝がん 第U相後期 臨床試験
(Evidence-Based Medicine対応のランダマイズドスタディ)
自家がんワクチンによって、肝がんにおける再発抑制効果が、第II相後期臨床試験(ランダマイズドスタディ)でかつてないほど明瞭に出現し(再発リスクが 81 %も激減)、世界的に権威あるアメリカ癌学会の臨床学術誌、
Clinical Cancer Research, 10: 1574-1579, 2004.
に、弊社の共同研究論文が掲載されました。
以下では、歴史対照群ではなく、はるかに正確な臨床試験をおこなうため同時にランダムに選ばれた対照群と比較した臨床試験結果が示されています。
図1
図1にあるように、同時期に肝がんの手術を受けた症例を無作為に対照群と自家がんワクチン投与群に分け、再発抑制効果、延命効果を観察しました。
この手術時の肝がんの平均サイズは、
対照群 53 ± 32 mm
ワクチン群 54 ± 28 mm
でした。大きな腫瘍サイズであったため、再発率が非常に高い症例群になっています。しかし、その他の背景因子も含めて、両群の間に背景因子の差はありませんでした。
まず、再発抑制の結果を図2に示します。
図2
図2の赤線は自家がんワクチン投与群で、青線は同時期に肝がんの手術を受けられた対照群です。
18 例の患者に自家がんワクチンを投与した結果、対照群の患者 21 例に比べ、 15 ヶ月(中央値)の追跡調査で、肝がん再発リスクが 81 %も抑えられました。これは、統計学的に有意な差(P=0.003)があります。
次に、延命効果の結果を示します。
図3
図3の赤線は前述の自家がんワクチン投与群で、青線は同時期に肝がんの手術を受けた対照群です。また、縦軸は全生存率を示しています。
試験期間中に死亡したのは対照群で 21 例中 8 例( 38 %)もあったのに対し、ワクチン投与患者では 18 例中たった 1例( 6 %)に過ぎませんでした。統計学的に有意な(P=0.01)延命効果があります。
(5) 脳腫瘍(多型膠芽腫、グレードIV)への効果
脳腫瘍のうち、グレードIVの多型膠芽腫( Glioblastoma multiforme, GBM )は、初回手術の後、再発(ほとんど必発とされている)をきたした場合、効果的な治療法がなく、予後が極めて不良とされています。
しかし、このGBMに対しても、自家がんワクチンは明瞭な治療効果が認められています。すでに厳密なハードクライテリアの観点から検討されており、5年生存例もでています。しかも、自家がんワクチンでは、問題となる副作用は認められておりません。
(詳しくは → ここをクリックして、脳腫瘍のページをご覧下さい)
(6) 自家がんワクチン療法実施のタイミング
大切なのは、自家がんワクチン療法実施のタイミングです。標準治療で使用される毒性の強い高用量の抗がん剤との同時併用はあまり望ましくはありません(一般的な抗がん剤はTリンパ球を殺す力が強いからです)。
もし可能ならば、強い抗がん剤治療で免疫系が破壊されてしまう前に、患者様に負担の少ない自家がんワクチン療法を実施願います。
ただし、最近は、毒性があまり出ない量=低用量の抗がん剤(CTCグレード 1程度までで、末梢血リンパ球数が1000/ul以上を保てる量)なら、むしろ併用した方が良い場合もあります。(→ ドクター通信アーカイブ、No. 158, 159, 160を参照)
もし、強烈な抗がん剤治療が先行している(CTCグレード 3以上の副作用さえもあり得る)場合は、できれば4週間以上の休薬期間をとることができ、かつ、その間に末梢血リンパ球数が1000/ul以上に回復するという見込みのある場合が望ましいと思われます。
ご注意: 体内でキラーリンパ球(特に細胞傷害性Tリンパ球 = CTL )の活性化がうまく行っても (→ 免疫反応テストの結果 に現れます)、 CTLが残存しているがん細胞群全体よりも早いスピードで増殖し、猛スピードでがん細胞を殺していかないと、画像上では残存がん組織が小さくなるという効果が現れません。
治療効果が現れるまで、3ヶ月以上かかることもまれではありません。その間、がん細胞群の増え方が遅いため急速に症状が悪化することはないだろう、という見通しがあることが、自家がんワクチン療法開始のキーポイントになります。また、このようなスローな癌は、一般に抗がん剤が効きにくく、化学療法のみで制御しようというのは無理な場合が多く見られます。
体内で活性化したCTLが増殖できるためには、 患者様の体力が十分に維持されていることが大切です。特に、がんの終末期の場合は、体力低下による免疫応答能が激減していることが多く、自家がんワクチン療法は無駄になりますので、お勧めできません。
<自家がんワクチン療法は貴院でも簡単に実施できます>
<提携をご希望の臨床医の先生方へ>
多種多様ながん免疫療法の中でも、自家がんワクチン療法は簡便なため、採用する大型病院、小型クリニックが続々と増えています。
( 全国に普及し始めております
→ こちらをご覧ください )
大学病院・総合病院でも、
病診連携方式で、大学病院・総合病院で手術を、連携クリニックで自家がんワクチン療法を外来で実施し、フォローアップを再びもとの病院で行っていくという、効果的なスタイルをとっているところも多くなってきました。
自家がんワクチン療法は、生きている細胞を用いる「免疫細胞療法」とは異なり、大型のクリーンルームも高額な細胞培養機器も不要です。
小型デスクトップクリーンベンチと小型微量高速遠心機を置くための、わずかデスク一つ分の院内スペースがあれば、ワクチンの無菌的院内調剤ができます。これらの機器類は、全部で40万円以下で整備できます。技術協力のため弊社から技術者を出張させますので新規人員も不要で、小型クリニックでも簡単に実施できます。
当社との技術提携をご希望の場合は、下記へ直接e-mail、またはお電話にてお問い合わせ願います。日程調整の上、院内カンファレンスを含め、当社から詳細な説明にお伺いします。
当社連絡先: |
セルメディシン株式会社
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