“自家がんワクチン”による
ヒト術後肝癌再発抑制効果が明瞭に、延命効果も
------ランダマイズドスタディの結果をアメリカ癌学会誌に発表------
(2004.3.12)
創薬ベンチャー企業のセルメディシン株式会社は、理化学研究所、中山医科大学(中国広東省広州市)、ジョンズホプキンス大学(米国 ボルチモア市)と共同で、革新的ながん免疫療法である“自家がんワクチン”が、肝がんの手術後の再発を明確に抑制できることを臨床試験で証明した。その論文がアメリカ癌学会誌・クリニカルキャンサーリサーチ3月号オンライン版に掲載された。
“自家がんワクチン”の特徴は 、がんの手術で取り出された患者本人のがん組織をホルマリン固定した後に使う点にある。ホルマリンに漬けて固定するがん組織は、病理診断のため、どの病院でも手術後に必ず作成されるが、実際にはほんの微量しか使われない。大部分は余ってしまい、捨てられている。だが、この中にはがんの特徴を表す「がん抗原」が大量に残っていて、 “自家がんワクチン”はこれを有効に活用するがん免疫療法だ。
肝がんでは、手術で完全に治ったはず、となっても、実際には1−2年以内に再発する場合が非常に多い。5年間では半数以下の患者しか生き残れない恐ろしい病気だ。日本では肝癌のために年間3万人も死んでいる。
臨床試験では、治療対象患者を無作為に2群にわけ、一方にだけ“自家がんワクチン”を投与して、がん再発が起こるかどうかを追いかけて見る必要がある。そうしないとはっきりと有効かどうか判らないからだ(これは第2相臨床試験といわれる)。今回の試験では、 18 例の患者に“自家がんワクチン”を投与した結果、対照群の患者 21 例に比べ、 15 ヶ月(中央値)の追跡調査で、肝がん再発リスクが 81 %も抑えられた。もちろん統計学的に有意な差がある。
注目すべきは、従来の免疫療法でははっきりしていなかった延命効果までも明瞭にあることが証明された点にある。観察期間中に死亡したのは対照患者で 21 例中 8 例( 38 %)もあったのに対し、ワクチン投与患者では 18 例中たった 1例( 6 %)に過ぎない。これほどの改善効果は驚異的で、従来のがん免疫療法ではとうてい見られなかったものだ。しかも、抗がん剤のような問題となる強烈な副作用は全くないという、がん免疫療法の特徴をそのまま維持している。
海外共同研究者:Ming Kuang, Bao-gang Peng, Ming-de Lu, Li-jian Liang, Jie-fu Huang, Qiang He, Yun-peng Hua, Saeri Totsuka, Shu-qin Liu, Kam W. Leong
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