● 臨床研究 ●
脳腫瘍は、その悪性度によって、グレードI〜IVに分類されています。特にその中でもグレードIVの多型膠芽腫( Glioblastoma multiforme, GBM )は、ガンの中でも最悪中の最悪といわれ、 従来の治療法では、患者の97%以上が5年以内に死亡しています。
GBMに対する自家がんワクチンの効果が、厳密なハードクライテリアの観点から検討され、以下のような明瞭な治療効果が認められています。
ハードクライテリアについては → こちらです
文献:Ishikawa E, Tsuboi K, et al., A clinical trial of autologous formalin-fixed tumor vaccine for glioblastoma multiforme patients. Cancer Sci.,
98:1226-1233, 2007.
図1 多型膠芽腫12例の全生存率(初回手術から計算)
全例とも前治療(手術・放射線・抗がん剤)後に再発したか残存腫瘍が残っている症例。前治療期間を含んでいます。
図2 多型膠芽腫12例の全生存率(自家がんワクチン接種後から計算)
全例とも前治療(手術・放射線・抗がん剤)後に再発したか残存腫瘍が残っている症例。前治療期間を除いてあるため、全体として図1の場合よりも短くなりますが、自家がんワクチンのみの影響を観察しやすくなっています。
この全生存期間に関する症例ごとの個別データは脳腫瘍専用ページをご覧下さい。
GBMで標準的な治療後の再発症例8例、初発術後もMRIで確認可能な残存腫瘍がある症例4例、計12例を対象に、自家がんワクチンを接種した結果、
CR1、PR1、MR2、NC1、PD7例 となっており、
奏効率(CR+PR)は 17%
NCまで含めた疾患制御率(disease control rate, CR+PR+MR+NC)は 42%
でした。
このうち、CR症例〔症例0039〕 は、既に自家がんワクチン接種後5年を経過して元気にしております。
なお、再発・術後残存している多型膠芽腫の場合、テモダール(奏効率7%、 文献:J Neurooncol. ;81:271-7, 2007)に比べれば、自家がんワクチンの奏効率17%は非常に高い値です。それほどまでに、このガンは悪性度が高いのです。
日本では、2006年7月より、 GBM の標準的治療法として、初発患者に対し「手術+放射線治療+テモダール投与」が行われておりますが、これでも全生存期間中央値(MST)は 14.6 ヶ月で、「手術+放射線治療」のみの場合の 12.1ヶ月に比べ、中央値がわずかに 2.5 ヶ月増加するにすぎません。
しかし、「手術+放射線治療+自家がんワクチン投与」と致しますと、再発患者を含む GBM 症例群において、中央値が 24 ヶ月と大幅に伸びております(図1、図3)。
図3 全生存期間中央値の変化
しかも、テモダールでは問題となる副作用が多数認められているのに対して(テモダール添付能書)、自家がんワクチンでは、これまで500例を越える各種がん症例に接種してきましたが、問題となる副作用は認められておりません。
代表的症例: 以下をクリックすると、脳腫瘍専用ページの中の症例画像を表示します。他の症例毎の説明も記載されています。
症例0029 症例0039